
各FX会社は、カバー先と呼ばれる金融機関と提携していて、FX会社は、そのカバー先とカバー取引と呼ばれる取引を行っています。
FX会社と金融機関との間の取引ですので、一見、投資家とは関係ない部分のように思えますが、実は、カバー先とカバー取引は、投資家の取引に対しても、影響を与えています。
このページでは、FX会社のカバー先とカバー取引、そして、これらが、投資家に与える影響について、解説します。
外国為替市場の仕組み
カバー先金融機関について理解するには、外国為替市場の仕組みを分かっておく必要があります。ということで、カバー先の話に進む前に、ここで、外国為替市場の仕組みについて、押さえておきましょう。
まず、通貨の取引は、外国為替市場で行われており、この外国為替市場は、インターバンク市場(銀行間取引市場)と対顧客市場という2つの市場に分けられます。
インターバンク市場は、金融機関や証券会社、為替ブローカーといった限られた市場参加者のみが参加できる市場です。一方の対顧客市場は、インターバンク市場参加者が、企業や個人と取引を行う市場になります。
個人投資家は、FX会社と取引を行いますが、各FX会社は、対顧客市場において、個人投資家の注文を外国為替市場に流しています。つまり、個人投資家は、外国為替市場に直接参加しているのではなく、FX会社を通して、間接的に、外国為替市場に参加していることになります。
カバー先とは
外国為替市場について、理解できたら、いよいよカバー先の話です。
カバー先とは、FX会社と提携しているインターバンク市場参加者のことで、対顧客市場において、FX会社と取引を行う金融機関のことを言います。ちなみに、カバー先は、カウンターパーティーとも呼ばれます。
カバー先金融機関の大きな役割は、FX会社に為替レートを提供することです。
個人投資家は、FX会社を通して、外国為替市場に参加している訳ですが、個人投資家に提示される為替レートは、FX会社が、カバー先から提供を受けた為替レートに基づいて決定されます。
各FX会社は、カバー先から提示された為替レートに自らの利益となるスプレッドを反映させた為替レートを個人投資家に提示するという仕組みです。
ちなみに、各FX会社に提示される為替レートは、カバー先によって異なります。FX会社が投資家に提示する為替レートは、カバー先から提供を受けた為替レートに基づいて決定されることから、カバー先の為替レートは、投資家が取引を行う為替レートにも影響を与えることになります。
カバー取引とは
ここで、FX会社とカバー先との取引について、考えてみましょう。
FX会社は、投資家から注文を受けると、カバー先に対して、投資家から受けた注文と全く同じ注文を出します。このFX会社とカバー先との取引のことをカバー取引と言います。
FX会社が、なぜカバー取引を行うかというと、リスクヘッジのためです。
店頭FXでは、投資家とFX会社が、売り手または買い手となって、当事者間で取引を行います。このような一対一の取引方法を相対取引と言いますが、相対取引の場合、一方に利益が出ると、もう一方は損失を被ります。いわゆるゼロサムゲームです。
投資家が損失を出せば、FX会社は利益を得られますが、投資家が利益を上げると、FX会社は損失を被るという仕組みです。仮に、投資家が利益を出し続けるようなことになると、FX会社は損失を被り続けることになってしまいます。
当然、投資家もFX会社も損失は出したくありません。そこで、FX会社が、損失を避けるために取る対策が、カバー取引です。
カバー取引として、投資家からの注文と全く同じ注文をカバー先に出した場合、投資家が利益を出すと、投資家とFX会社との取引においては、FX会社は、損失を出してしまうことになりますが、カバー取引であるFX会社とカバー先との取引においては、投資家と同じだけの利益を得ることになります。
この場合、最終的に損失を被るのは、カバー先で、FX会社は、損失を出さないだけでなく、投資家との取引の中で、スプレッドの分だけ利益を得ることができます。
このように、カバー取引は、FX会社にとって、損失を避けるためのリスクヘッジという重要な意味を持っているのです。
FX会社のカバー先は多いほど良い
それぞれのFX会社によって、提携しているカバー先の金融機関は異なります。カバー先が多いFX会社もあれば、少ないFX会社もあるのですが、基本的に、FX会社のカバー先は多ければ、多いほど良いと考えて問題ありません。
FX会社が、多くのカバー先を持っていることは、投資家にとっても、メリットがあるからです。
FX会社のカバー先が多いことのメリット
FX会社のカバー先の数が多いと、投資家にとっては、注文が成立しやすくなる、より有利な為替レートで取引できるというメリットがあります。
- 注文が成立しやすい
- より有利な為替レートで取引できる
注文が成立しやすい
提携しているカバー先の金融機関が多いFX会社ほど、投資家の注文は通りやすくなります。
FX会社は、投資家から注文を受けると、カバー先に対して、カバー取引を行いますが、仮に、カバー取引が成立しなければ、投資家のFX会社に対する注文も成立することはありません。
FX会社は、損失を避けるためにカバー取引を行っている訳で、カバー取引が成立しない状況で、投資家との取引を成立させてしまうと、自らが損を出してしまうリスクが生じてしまいます。カバー取引が成立しない状態は、FX会社にとって、非常にリスキーで、そのような状態では、投資家からの注文を受け付けたくないはずです。
投資家とFX会社との取引が相対取引であるのと同じように、FX会社とカバー先とのカバー取引も相対取引です。つまり、FX会社は、カバー取引となる注文を受けてくれる金融機関を探す必要があります。もし、注文を受けてくれるカバー先が見つからなければ、投資家がFX会社に対して出した注文も成立しません。
カバー先が多いFX会社とカバー先が少ないFX会社では、どちらが、カバー取引を行いやすいでしょうか。
単純に考えれば、カバー先が多いFX会社ですよね。カバー先が多いほど、注文を受けてくれる金融機関を探しやすくなるはずです。
例えば、カバー先が1社しかない場合、そのカバー先が注文を断ってしまえば、カバー取引は成立しないことになりますが、カバー先が10社あれば、その10社の中から、注文を受けてくれる金融機関を探すことができます。
カバー先が多いFX会社ほど、カバー取引を成立させやすくなり、結果的に、投資家の注文もスムーズに通りやすくなるということです。
FX会社のカバー先の数は約定力にも影響を与える
カバー先が多いFX会社ほど、投資家の注文が通りやすくなるということは、カバー先の数は、FX会社の約定力を左右する要素のひとつと言うことができます。
約定力は、カバー先の金融機関の質やFX会社のサーバーの処理能力等によっても左右されますので、カバー先の数だけで判断できるものではありませんが、FX会社の約定力を測る指標のひとつであることは、間違いありません。
約定力が低いと、注文が通らなかったり、約定スピードが遅かったり、スリッページが発生したりと、投資家にとって良いことは一切ありません。これらに悩まされている場合は、約定力の高いFX会社を使ってみましょう。
より有利な為替レートで取引できる
先述した通り、FX会社が、投資家に提示する為替レートは、カバー先からFX会社に提供された為替レートがベースとなっていますが、投資家は、FX会社のカバー先が多いほど、有利な為替レートで取引できる可能性が高まると考えられます。
カバー先の金融機関が、FX会社に提供する為替レートには、FX会社が、投資家に提示する為替レートと同じように、スプレッドが反映されています。
このスプレッドが、カバー先にとっての利益となる訳ですが、FX会社も、投資家と同じで、できるだけスプレッドが狭く、低コストで済むカバー先と取引したいと考えています。そのため、提携しているカバー先の中から、FX会社にとって、最も有利な為替レートを提示する金融機関を選んで、取引を行うのが、通常です。
そして、そのカバー先が提示した為替レートにスプレッドを上乗せして、投資家に為替レートを提示するという仕組み。
ということは、カバー先が提示する為替レートが、FX会社にとって有利なほど、投資家も、より有利な為替レートで取引ができることになります。
カバー先が多ければ、どのカバー先と取引を行うか、FX会社の選択肢は増えますので、FX会社も、投資家も、より有利な為替レートで取引を行える可能性が高くなるということです。
FX会社のカバー先とカバー取引のまとめ
FX会社と提携して、FX会社に為替レートを提供している金融機関のことをカバー先と言い、FX会社が、投資家と取引を行う際に、カバー先と行う取引をカバー取引と言います。
投資家にとって、FX会社のカバー先となる金融機関は、なかなか見えづらい部分で、意識することも少ないのですが、FX会社にとって、重要な存在であると同時に、実は、投資家の取引にも、影響を与えています。
FX会社が、投資家に提示する為替レートやFX会社の約定力は、カバー先の影響を受けるからです。
FX会社のカバー先が多いほど、投資家にとっても、有利に働くことになりますので、FX会社を選ぶ際には、FX会社のカバー先に注目してみるのも、良いでしょう。