
今や、一般的な投資法となった暗号資産投資ですが、FXとはどのような違いがあるのでしょうか。
ということで、このページでは、FXと暗号資産投資の違いやそれぞれの特徴について、解説します。
暗号資産投資とは
暗号資産投資は、ビットコインを代表とする暗号資産の取引を通して、利益を狙う投資です。
暗号資産投資も、FXと同じように、価格の変動を利用して、売買差益を狙うことになります。
近年では、暗号資産もメジャーな存在となっていて、暗号資産投資は、FXや株式投資と並んで、一般的な投資法となっています。
暗号資産とは
暗号資産とは、インターネット上で流通する現物のない電子的な資産のことです。
通貨のように国の保証はありませんが、通貨と同じように、代金の支払い等に使用でき、通貨との交換も可能です。
なお、暗号資産は、日本では、当初、仮想通貨と呼ばれていましたが、2020年5月1日の改正資金決済法施行により、暗号資産に呼称が変更されました。
暗号資産の種類
暗号資産の種類は、実に豊富で、世界中で流通している暗号資産の種類は、1,500以上とも言われています。
その中において、主要な暗号資産としては、以下のようなものがあります。
- ビットコイン(BTC)
- イーサリアム(ETH)
- イーサリアムクラシック(ETC)
- リップル(XRP)
- ネム(XEM)
- ステラルーメン(XLM)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- ライトコイン(LTC)
- モナコイン(MONA)
なお、ビットコイン以外の暗号資産を総称して、アルトコインと呼びます。暗号資産の代表格であるビットコインは、暗号資産界における基軸通貨のような位置付けにあり、他の暗号資産とは、明確に区別されています。
暗号資産の販売所と取引所
暗号資産の取引は、暗号資産交換業者を通して、行うことになりますが、暗号資産交換業者には、販売所形式と取引所形式という2種類の販売形態があり、販売所と取引所では、取引の相手方が異なります。
暗号資産の販売所とは
販売所における取引の相手方は、暗号資産交換業者です。販売所では、交換業者が、利用者に暗号資産を販売する形となります。
従って、販売所形式の場合、暗号資産の取引価格は、交換業者が提示した価格になります。
暗号資産の取引所とは
一方、取引所における取引の相手方は、暗号資産交換業者の利用者です。取引所では、暗号資産交換業者の利用者同士が取引を行うことになります。
販売所では、暗号資産の価格を交換業者が決定しますが、これに対し、取引所の場合、暗号資産の取引価格は、利用者が決めます。
利用者は、いくらで買いたい、いくらで売りたいという注文を出し、他の利用者の条件と一致すれば、取引が成立することになります。
暗号資産の現物取引と証拠金取引
また、暗号資産投資における取引方法には、現物取引と証拠金取引の2種類があります。
暗号資産の現物取引とは
現物取引とは、その名の通りで、暗号資産の現物の売買を行う取引です。
現物取引では、FXのようにレバレッジをかけることはできず、また、売り注文から入ることもできません。
暗号資産の証拠金取引とは
証拠金取引は、現物のやり取りは行わず、売買の結果生じた差額のみをやり取りする差金決済という決済方法を用いた取引です。
暗号資産FXと呼ばれることもあるように、暗号資産の証拠金取引は、FXと同じ仕組みで、暗号資産交換業者に証拠金を預けることで、レバレッジを利用した取引を行うことができます。また、証拠金取引の場合は、売り注文から始めることもできます。
FXと暗号資産投資の違い
項目 | FX | 暗号資産投資 |
---|---|---|
投資対象 | 通貨 | 暗号資産 |
投資対象数 | 約20通貨ペア | 10通貨程度 |
利益 | 売買差益、スワップポイント | 売買差益 |
取引時間 | 24時間(土日除く) | 24時間(土日祝日含む365日) |
取引コスト | スプレッド | スプレッド、取引手数料、レバレッジ手数料 |
レバレッジ | 最大25倍 | 最大4倍 |
空売り | 可 | 証拠金取引のみ可 |
必要資金 | 数千円 | 1,000円程度 |
ボラティリティ | 低い | 高い |
信託保全 | あり | あり |
税制 | 申告分課税 | 総合課税 |
投資対象
FXと暗号資産投資では、当然、投資の対象が異なります。
FXは、世界中の国や地域が発行する通貨が投資対象となり、暗号資産投資では、ネット上で取引される暗号資産が投資対象となります。
投資対象数
FXでは、通貨と通貨の組み合わせである通貨ペアを取引することになりますが、取引可能な通貨ペアは、各FX会社によって異なります。50を超える通貨ペアを取り扱っているFX会社もありますが、大半のFX会社では、20から30ペア程度の取り扱いとなっています。
暗号資産投資も、FXと同様、交換業者によって、取り扱っている通貨が異なります。国内の暗号資産交換業者が取り扱っている暗号資産は、ビットコインとその他のメジャーなアルトコインというのが主で、取引可能な暗号資産は、10種類程度です。
利益
FXの利益には、為替変動を利用した売買差益と通貨間の金利差を利用したスワップポイントの2種類があります。
一方の暗号資産投資では、価格変動を利用した売買差益を得ることはできますが、暗号資産には、金利という概念がないため、スワップポイントや利息といった利益を得ることはできません。売買差益のみが、暗号資産投資における利益となります。
取引時間
通貨の売買が行われる外国為替市場は、土日を除いて、世界中のどこかで、24時間オープンしています。そのため、FXでは、土日を除く24時間取引ができます。
これに対して、暗号資産投資では、土日祝日を含む24時間365日取引が可能です。
24時間取引が可能という点は、FXも暗号資産投資も変わりませんが、FXは、土日の取引ができず、暗号資産投資は、土日でも取引ができるという違いがあります。
取引コスト
FXでは、取引の度に課される取引手数料は、無料というのが一般的ですが、その代わりに、スプレッドという仕組みが設けられています。スプレッドは、買値と売値の差のことで、投資家がFX会社に支払う手数料の役割を果たしています。
これに対し、暗号資産投資の取引コストの仕組みは、少々複雑な仕組みになっています。
暗号資産投資における取引コストとしては、スプレッド、取引手数料、レバレッジ手数料という3つが考えられます。
- スプレッド
- 取引手数料
- レバレッジ
スプレッド
暗号資産投資においても、FX同様、スプレッドが存在します。
暗号資産投資のスプレッドも、FXと同じ仕組みで、買値と売値の差を投資家が負担しなければなりません。
なお、スプレッドの幅は、取引所と販売所で大きく異なります。交換業者が取引の相手となる販売所では、スプレッドが広く設定されているのに対し、利用者同士で取引を行う取引所では、スプレッドが狭く設定されています。
スプレッドは、主に、販売所における取引の場合に、課せられるものと考えておいて差支えはないでしょう。
取引手数料
取引手数料は、取引所における現物取引において、課されるものです。
取引所は、暗号資産交換業者の顧客同士が取引を行う形態ですが、取引所には、取引参加者の注文が並べられた取引板というものがあり、取引板にない価格で注文を出す取引参加者を「メイカー(Maker)」、反対に、既に取引板に並んでいる注文を約定させる取引を行う取引参加者を「テイカー(Taker)」と呼びます。
メイカーとテイカーでは、取引手数料が異なり、メイカーに課される手数料をメイカー(Maker)手数料、テイカーに課される手数料をテイカー(Taker)手数料と言います。
このうち、メイカー手数料については、マイナスの値に設定されていることもあり、メイカー手数料がマイナスの場合、メイカーは、手数料にあたる金額を受け取ることができます。
なお、取引手数料については、無料としている交換業者もあります。
レバレッジ手数料
レバレッジ手数料は、証拠金取引において、課される手数料で、日をまたいでポジションを保有した場合、保有しているポジション評価額に対して、一定割合のレバレッジ手数料を負担しなければなりません。
FXの場合、ロールオーバー時には、スワップポイントが発生しますが、暗号資産投資においては、ロールオーバー時にレバレッジ手数料が発生することになります。
レバレッジ
現在、FXでは、最大25倍のレバレッジをかけることが可能です。レバレッジは、少ない資金で大きな取引ができる仕組みのことで、FXの大きな特徴のひとつとなっています。
暗号資産投資の場合は、現物取引では、レバレッジをかけることはできませんが、証拠金取引においては、最大4倍のレバレッジをかけることができます。
空売り
空売りとは、所有していないものを売って、後で、それを買い戻す取引のことです。
通常の取引の場合、所有していないものを売ることはできませんが、FXは、現物の受け渡しを行わず、取引の結果生じた損益のみを受け渡す差金決済という決済方法を取り入れているため、空売りの取引が可能になっています。
FXでは、空売りにより、安く買って高く売る取引だけでなく、高く売って安く買い戻す取引ができることから、価格が上昇しているケースだけでなく、下落しているケースにおいても、為替差益を狙えるというメリットがあります。
暗号資産投資の場合は、現物取引では、空売りを行うことはできませんが、証拠金取引では、FXと同様に空売りが可能です。従って、暗号資産投資の場合、証拠金取引を利用すれば、下落相場でも、利益を出すことができます。
必要資金
取引に必要な資金は、FXでは、4,000円程度、暗号資産投資では、500円から1,000円程度です。
どちらも、少額の資金で取引が可能ですが、FXと暗号資産投資を比べると、暗号資産投資の方が、より少額での取引に対応しています。
ちなみに、FXでは、1通貨単位ではなく、一度に、1,000通貨や1万通貨といったまとまった量の通貨を取引するのが、一般的です。これに対して、暗号資産投資では、1通貨に満たない小数点以下の通貨量から取引ができます。
ボラティリティ
値動きの幅を表すボラティリティは、暗号資産の方が、通貨よりも、圧倒的に高いです。
為替における1日の変動幅は、価格の1%から2%程度ですが、暗号資産の場合、価格の30%から40%変動することもあります。
なお、ボラティリティは、高い方が、ハイリスクハイリターン、低い方が、ローリスクローリターンです。そのため、通貨と暗号資産を比べると、通貨の方が、ローリスクローリターン、暗号資産の方が、ハイリスクハイリターンの投資先と言えます。
ただし、FXは、暗号資産投資よりも高いレバレッジをかけることができますので、ボラティリティの低さを高いレバレッジで補って、大きなリターンを期待できる仕組みになっています。
信託保全
FX会社は、顧客から預かった証拠金等を信託銀行に預け、顧客の資産とFX会社自身の資産とを区分して管理しています。これにより、万が一、FX会社が倒産した場合でも、投資家がFX会社に預けた資産は、返還される仕組みとなっています。
この仕組みを信託保全と言い、FX会社は、金融商品取引法により、信託保全を行うことが義務付けられています。
一方、暗号資産投資はというと、2020年5月1日に施行された改正資金決済法により、暗号資産交換業者に対しても、信託保全が義務付けられました。
これにより、現在では、暗号資産交換業者が倒産した場合でも、FX同様、投資家の資産は返還される仕組みとなっています。
税制
FXと暗号資産投資では、税制にも違いが見られます。
FXにおける利益は、為替差益もスワップポイントも雑所得として、申告分離課税の対象となります。税率は、一律20.315%(所得税…15.315%、住民税…5%)です。
これに対して、暗号資産投資における利益は、雑所得として、総合課税の対象となり、累進課税が適用されることから、税率は、15.105%(所得税…5.105%、住民税…10%)から55.945%(所得税…45.945%、住民税…10%)まで所得に応じて、変動します。
つまり、FXの場合は、所得に関係なく一律の税率が適用され、暗号資産投資の場合は、所得が少なければ、税率が低くなり、所得が多ければ、税率が高くなる仕組みになっています。
なお、給与所得者の場合、FXでも暗号資産投資でも、給与収入が2,000万円以下で、給与所得や退職所得以外の所得が、20万円を超えると、確定申告が必要になります。
損益通算
損益通算とは、複数の金融商品における利益と損失を通算できる制度です。損失を出してしまった場合でも、その損失を他の金融商品で得た利益と相殺できるため、支払う税金を抑えることができます。
FXで生じた損失は、他に「先物取引に係る雑所得等」に分類される損益があれば、損益通算ができることになっていますが、暗号資産は、損益通算に対応していないため、暗号資産投資で生じた損失については、他の金融商品との損益通算はできません。
繰越控除
繰越控除とは、損失が発生した場合に、その損失を繰り越して、翌年以降の利益から控除することができる制度です。
FXでは、繰越控除が可能ですが、暗号資産投資では、繰越控除ができないため、損失が出た場合には、暗号資産投資よりFXの方が、税制面で優位にあると言えます。
FXと暗号資産投資のどちらが良いか
FXも暗号資産投資も、少額から取引が可能で、始めるためのハードルが低いため、投資初心者の方にも、おすすめです。
ただ、このページで解説してきたように、両者は、それぞれ異なる特徴を持っているため、一概に、どちらが良いと言い切ることはできません。
例えば、FXでは、為替差益の他に、スワップポイントを得ることができますし、暗号資産投資の場合は、平日に限らず、土日でも取引が可能です。
それぞれの特徴を考慮して、FXにするか、暗号資産投資にするか、選んでみると良いと思います。
ただし、暗号資産は、まだまだ歴史が浅く、その可能性が未知数であるという点、通貨のように国の信用に基づくものでないという点には、注意が必要です。
また、税制に代表されるように、制度上、整備されていない点も多いことから、今後の動向に気を配っておく必要があります。
まとめ
- 暗号資産には、現物取引と証拠金取引がある
- FXでは、最大25倍、暗号資産の証拠金取引では、最大4倍のレバレッジをかけることができる
- 暗号資産では、土日含む24時間365日取引が可能
- FXも暗号資産も少額から取引が可能
FXも暗号資産投資も、投資初心者の方に人気ですが、このページで解説したように、いくつもの違いがあります。
異なる特徴を持った両者ですが、どちらも、始めるためのハードルが低いため、初めての投資としても、おすすめできます。
ただし、暗号資産は、まだまだ未知数で、通貨のように国の保証がないため、その価値がなくなってしまう危険性もあります。また、サイバー攻撃の標的にされることも多いため、流出等のリスクには、十分注意しておいた方が良いでしょう。