
投資商品の代表格とも言えるのが、株式投資です。FXと並んで、個人投資家に人気がありますが、両者には、多くの違いがあります。
そこで、このページでは、FXと株式投資の違いについて、解説していきます。
FXと株式投資の違い
項目 | FX | 株式投資 |
---|---|---|
投資対象 | 通貨 | 企業 |
投資対象数 | 約20通貨ペア | 約4,200銘柄 |
市場 | 外国為替市場 | 株式市場 |
変動要因 | 経済情勢等 | 企業業績等 |
利益 | 売買差益、スワップポイント | 売買差益、配当金、株主優待 |
取引時間 | 平日24時間 | 平日9:00~11:30(前場)、12:30~15:00(後場) |
取引コスト | スプレッド | 取引手数料 |
レバレッジ | 最大25倍 | なし(信用取引では最大約3.3倍) |
空売り | 可 | 不可(信用取引では可) |
必要資金 | 数千円 | 数万円 |
ボラティリティ | 低い | 高い |
値幅制限 | なし | あり |
投資対象
FXと株式投資では、投資の対象が異なります。FXでは、世界中の国や地域が発行する通貨が投資対象となり、株式投資では、企業が資金調達の目的で発行する株式が投資対象となります。
株式投資の場合、企業が倒産してしまえば、投資対象となる株式の価値はなくなってしまいますが、FXの場合は、通貨を発行する国や地域がなくならない限り、投資対象となる通貨の価値がなくなることはありません。
投資対象数
投資対象の数としては、FXに比べ、株式投資の方が、圧倒的に多くなります。
FXでは、通貨と通貨の組み合わせである通貨ペアを取引することになりますが、この通貨ペアは、各FX会社によって、取り扱っている数が異なります。多いところでは、50を超える通貨ペアを取り扱っていますが、大半のFX会社では、20から30ペア程度の取り扱いとなっています。
一方、現在、国内の株式市場に上場している企業数は、約4,200社で、株式投資においては、この中から投資する企業を選ぶことができます。
市場
通貨は、外国為替市場で取引が行われ、株式は、証券取引所(株式市場)で取引が行われます。
株式の場合、企業が証券取引所に上場し、上場した証券取引所株式市場のみで取引が可能となります。一方の通貨には、取引所がありません。通貨が取引される外国為替市場では、売り手と買い手が直接取引を行います。FXの場合は、投資家とFX会社が直接取引を行うことになります。
ちなみに、株式投資のように、取引所を介しての取引を取引所取引といい、FXのように、売り手と買い手が直接取引を行うことを相対取引といいます。
変動要因
通貨と株式では、価格の変動要因も異なります。
通貨が、通貨を発行する国や地域の金融政策や世界の経済情勢の影響を強く受けるのに対し、株式は、企業の業績が主な変動要因となります。
そのため、値動きを分析する際には、FXでは、景気動向等のマクロ経済的な知識が必要となり、株式投資では、財務や会計といった個別の企業に焦点を当てたミクロ経済的な知識が必要になります。
利益
FXも、株式投資も、通貨や株式を売却することによって得られる売買差益が、主な利益となりますが、売買差益以外の利益には、違いが見られます。
FXでは、通貨間の金利差に応じて、通貨ペアを保有している間は毎日、スワップポイントを受け取ることができます。
一方、株式投資では、企業の業績に応じ、年に1回から2回、配当金を受け取ることができます。また、売買差益や配当の他に、独自の株主優待を行っていることもあり、これも、株式投資の魅力のひとつとなっています。
取引時間
FXは、平日であれば、24時間いつでも取引が可能です。これに対して、株式投資における取引時間は、午前中が平日の9時00分から11時30分(前場)まで、午後が12時30分から15時00分(後場)までと限られています。
株式は、証券取引所で売買が行われるため、企業が上場している証券取引所がオープンしている時間帯しか取引を行うことができません。
これに対し、通貨は、世界中で取引されていています。外国為替市場は、常に、世界中のどこかでオープンしていることから、FXでは、24時間取引をすることができます。
取引コスト
FXと株式投資では、コストの仕組みが異なります。
株式投資では、取引を行う度に、取引金額に応じた手数料を支払うのが、一般的です。対するFXでは、手数料無料というのが当たり前で、その代わりに、スプレッドという仕組みが設けられています。
スプレッドとは、買値と売値の差のことで、常に、買値が売値を上回るように設定されています。FXにおいては、このスプレッドが、実質的な取引コストにあたりますが、株式投資における手数料と比べると、かなり低い水準となっています。
仮に、FXと株式投資それぞれにおいて、100万円の取引を行うとすると、株式投資では、数百円から千円程度のコストがかかりますが、FXでは、数十円程度のコストに抑えることができます。
株式投資が、高コストという訳ではありませんが、FXの方が、より低コストな取引が可能です。
レバレッジ
FXには、レバレッジをかけることができるというメリットがあります。
少ない資金で大きな取引ができる仕組みのことをレバレッジといい、FXでは、最大25倍のレバレッジをかけることができます。つまり、最大で、資金の25倍の大きさの取引を行うことができるということです。
これに対し、株式投資では、レバレッジをかけることができません。信用取引を行うことで、最大約3.3倍のレバレッジをかけることができますが、レバレッジの大きさでは、FXの方が、株式投資を大きく上回っています。
空売り
株式投資における売買差益は、安く買って高く売ることでしか、得ることができませんが、FXにおいては、安く買って高く売るだけでなく、高く売って安く売ることでも、得ることができます。
買いだけでなく、売りからも入ることができ、空売りに対応しているというのが、FXの特徴のひとつです。
なお、株式投資でも、信用取引を行うことで、空売りをすることができます。
必要資金
FXは、レバレッジをかけられるため、取引に必要な資金も少なくて済みます。FXでは、一度に1,000通貨以上の取引を行うのが一般的なのですが、1,000通貨の取引であれば、4,000円程度の資金で行うことができます。
これに対して、株式投資では、銘柄によって、必要資金が大きく異なりますが、数万円から数十万円程度の資金は準備しておきたいところです。
株式銘柄の中には、数十万円以上の資金がなければ、投資できない銘柄も珍しくなく、資金が少ないと、それだけ、投資先が限定されてしまいます。数万円程度から取引可能な銘柄も少なくありませんが、株式投資の場合、必要資金は、銘柄に大きく左右されることになります。
ボラティリティ
値動きの幅を表すボラティリティは、通貨よりも、株式の方が、高い傾向にあります。
なお、ボラティリティは、高い方が、ハイリスクハイリターン、低い方が、ローリスクローリターンです。
株式の場合、企業の業績によって、株価が数倍になったり、反対に、半分以下となることも珍しくありません。株価が10倍に成長した銘柄のことをテンバガーと呼びますが、10倍どころか、1年で100倍となった銘柄もあります。
一方、為替の変動幅は、株価に比べると、低い水準にあります。1日の変動幅は、動いても、価格の1%から2%程度で、価格が数倍や半分以下になるようなことは、普通では、あり得ません。
通貨は、株式に比べると、ローリスクローリターンな投資先ではありますが、FXでは、レバレッジをかけることによって、大きなリターンが期待できる仕組みとなっています。
値幅制限
株式投資においては、株価の暴騰や暴落を防ぐ目的で、価格の変動幅に上限と下限が設けられています。これを値幅制限といって、値幅制限の上限に達することをストップ高、下限に達することをストップ安といいます。
対するFXでは、値幅制限はありません。通貨は、株式ほどボラティリティが高くありませんが、上昇するところまで上昇する、下落するところまで下落するということになります。
FXと株式投資のどちらが良いか
ここまで、FXと株式投資の違いについて、触れてきましたが、結局のところ、どちらの方が良いのでしょうか。
以下では、両者の違いを踏まえて、それぞれのメリットとデメリットについて、まとめてみました。
株式投資のメリットとデメリット
- 投資対象が豊富
- 配当金や株主優待がある
- 株主になれる
- まとまった額の投資資金が必要
- FXに比べると取引コストが高い
- 取引時間が限られている
株式投資のメリット
投資対象が豊富
株式投資では、全ての上場企業に投資が可能です。投資対象がとにかく豊富で、この点は、FXに比べて、はるかに優位にあります。
配当金や株主優待がある
配当金がもらえたり、株主優待があるのは、株式投資の大きな魅力。株主優待目当てに投資をするというのも、株式投資の楽しみ方のひとつです。
株主になれる
株式を買うということは、その企業の株主になるということを意味します。株主になれるというのは、株式投資ならではの魅力です。株式投資を通して、身近な商品やサービスを扱う企業の株主になることもできます。
株式投資のデメリット
まとまった額の投資資金が必要
株式投資を始めるには、ある程度まとまった金額の投資資金が必要になります。数万円程度から始めることも可能ですが、10万円単位の資金を用意する方が、ベターです。
FXに比べると取引コストが高い
取引コストについては、株式投資においても、ネット証券を中心にコストが抑えられていて、決して高コストという水準にはありません。
そのため、デメリットとするのは適切ではないかもしれませんが、FXの方が、より低コストとなっていることから、コストの面では、FXに分があると言えます。
取引時間が限られている
株式投資では、株式市場が開いている平日の昼間しか取引をすることができません。
そのため、昼間に仕事があるような方だと、トレードスタイルによっては、取引自体が難しくなってしまいます。
長期投資のような取引手法であれば、大きな支障はないかもしれませんが、短期的に売買を行うデイトレードのようなトレードスタイルを目指しているのであれば、時間を問わず取引が可能なFXの方が、向いています。
FXのメリットとデメリット
- 少額から始められる
- 24時間取引ができる
- あらゆる相場局面で利益を狙える
- 取引コストが低い
- ゼロサムゲーム
FXのメリット
少額から始められる
FXの大きなメリットが、少額でも始めることができるという点です。
FXでは、レバレッジをかけた取引が可能なため、少ない資金でも、大きな取引ができるようになっています。ということは、FXを始めるにあたって、準備しなければならない投資資金も少なくて済むということになります。
必要となる投資資金は、各FX会社によって異なりますが、4,000円程度で取引が可能なFX会社も多く、余裕資金を考えても、1万円程度の金額から始めることができます。
24時間取引ができる
24時間取引ができるというのも、FXのメリットです。
FXは、土日を除き、時間を問わず、取引ができるため、昼間は忙しいサラリーマンの方や学生の方、主婦の方からも人気があります。
ちなみに、日本時間の夜は、アメリカやヨーロッパの海外勢が市場に参加することから、取引が活発になり、外国為替市場が最も盛り上がる時間帯となっています。
あらゆる相場局面で利益を狙える
FXは、株式投資と異なり、空売りに対応していることから、あらゆる相場状況でも、利益を狙うことができます。
株式投資の場合、売りから入ることができないため、株価が下がっている状況下では、儲けを得ることはできません。
一方、FXでは、安く買って高く売る取引だけでなく、高く買って安く売る取引が可能なため、相場が上昇している状況はもちろんのこと、下落している状況でも、稼ぐことができます。
取引コストが低い
FXでは、取引手数料無料というのが、一般的です。
FXにおいて、取引コストに該当するスプレッドは、かなり低水準に設定されていることから、株式投資よりも、低コストの取引が可能となっています。
FXのデメリット
ゼロサムゲーム
FXのデメリットとも考えられるのが、FXが、ゼロサムゲームであるという点です。
ゼロサムゲームというのは、参加者の得点の総和がゼロになるゲームのことです。
FXは、通貨と通貨の交換を通して、利益を狙う金融商品ですが、交換を行ういずれかの通貨の価値が上がれば、もう一方の通貨の価値は下がることになります。外国為替において、すべての通貨の価値が一斉に上がったり、一斉に下がったりということは、あり得ません。
ゼロサムゲームでは、勝者の数だけ敗者がいます。FXにおいては、誰かが利益を出していれば、誰かが損失を出しているということになります。
常に勝者側に立てれば良いですが、そううまくはいかないのが現実です。初心者の方であれば、特に、敗者側に立たされることが多くなってしまいます。
一方、株式投資は、ゼロサムゲームではありません。株式市場全体が上昇することもあれば、株式市場全体が下落することもあります。
そのため、株式投資の場合、市場全体の成長の波に乗ることができれば、利益を出すことができます。
ゼロサムゲームだから悪いという訳ではありませんが、FXでは、株式投資のように、市場全体が儲かるようなことは起こり得ないということは、頭に入れておいた方が良いかもしれません。
FXは投資初心者でもハードルが低い
FXと株式投資には、それぞれ異なる特徴や魅力があることから、どちらが良いとは、一概には言い切れません。
ただ、投資初心者の方にとって、よりハードルが低いのは、FXです。
FXなら、少ない資金でも始めることができますし、昼間はもちろん、早朝でも夜間でも、時間を選ばず、取引に参加することができます。
この点、株式投資の場合は、まとまった金額の資金が必要になりますし、平日の昼間という限られた時間しか、取引を行うことはできません。
その手軽さというのが、FXの魅力であり、人気の理由のひとつです。
特に、とりあえず少額から投資を始めてみたいという方には、FXをおすすめします。
まとめ
- FXも株式投資も売買差益を狙う投資ではあるが、細かい点では多くの違いが見られる
- 株式投資の場合、価格が10倍以上となる銘柄もあり、大きなリターンを狙うことができる
- FXでは、レバレッジをかけることによって、少額でも大きなリターンを狙うことができる
- FXは少ない資金で始められるため、投資初心者でもハードルが低い
個人投資家に人気のFXと株式投資ですが、このページで解説したように、両者には、いくつもの違いがあります。
投資初心者にとってのハードルの低さという点では、FXに分がありますが、それぞれに魅力がありますので、どちらが良いと言い切ることはできません。
どちらを始めようか悩んでいるという方は、これらの特徴を参考に選んでみてはいかがでしょうか。