
自然界には、フィボナッチ数というものが、多く見られ、人間が最も美しく感じる比率と言われている黄金比も、フィボナッチ数列から求められます。
FXでは、この何とも不思議な数列であるフィボナッチ数列を応用したテクニカル指標が、相場分析に用いられることがあります。
フィボナッチ数列を用いたテクニカル指標は、いくつかありますが、ここでは、その中でも、最もポピュラーな存在であるフィボナッチリトレースメントの使い方をメインに解説していきます。
フィボナッチリトレースメントとは
フィボナッチリトレースメントは、フィボナッチ数列を活用して、トレンドの押し目や戻りを予測するテクニカル指標です。
相場局面は、大きく分けると、トレンドとレンジという2種類に分類されますが、どれだけ勢いの強いトレンドであっても、どこかで必ず調整が入ります。上昇トレンドであれば、上昇と調整の下落を繰り返しながら、上昇していきますし、下降トレンドであれば、下落と調整の上昇と繰り返しながら、下落していきます。
上昇トレンドの中の調整の下落を押し目、下降トレンドの中の調整の上昇と戻りと言いますが、フィボナッチリトレースメントは、フィボナッチ数列から求められる比率より、どの水準で、押し目や戻りが形成されるかを分析するものです。
フィボナッチ数列とは
フィボナッチリトレースメントの詳しい話に入る前に、まずは、その基礎となっているフィボナッチ数列について、知っておきましょう。
フィボナッチ数列は、イタリアの数学者のレオナルド・フィボナッチにちなんで名づけられた数列で、以下のように、直前の2つの数の和を並べていくことで作られる数列のことです。
0+1=1、1+1=2、1+2=3、2+3=5…といった具合に、数字が並んでいきます。
一見、何の変哲もない数列なのですが、不思議なことに、フィボナッチ数列は、自然界にも多く見られ、例えば、植物の花びらの数やヒマワリの種の螺旋の数は、フィボナッチ数であることが多いことが知られています。
フィボナッチ数列の特徴
フィボナッチ数列には、1つ上位の数との比率は、約1:1.618に近付くという特徴を持っています。
実際に見てみると、5:8=1:1.6、8:13=1.625、1.61538…といった具合です。
実は、この1:1.618という比率は、黄金比と呼ばれるもので、人間が最も美しく感じる比率と言われていて、ピラミッド等、多くの歴史的建造物や美術品にも用いられています。身近なところでは、名刺やクレジットカードの縦の長さと横の長さの比率も、黄金比に近い数字が用いられています。
また、同様に、1つ下位の数との比率は、1:0.618に、2つ下位の数との比率は、1:0.382に、3つ下位の数との比率は、1:0.236に近付いていくという特徴があります。
フィボナッチリトレースメントの見方
フィボナッチリトレースメントは、任意の高値と安値を基準として、フィボナッチ比率から求められた水準をラインで示してくれるテクニカル指標です。
フィボナッチリトレースメントでよく用いられる比率としては、23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%といった数値があります。この内、50.0%は、フィボナッチ数列から求められる比率ではありませんが、半値という意味で、意識されることが多いことから、重要な意味を持つ数字として、フィボナッチリトレースメントにおいても、用いられることが多いです。
トレンドの中で、これらの比率から求められる水準は、重要な相場の節目として、多くのトレーダーから意識されていて、サポートラインやレジスタンスラインとしての機能を持っています。
イメージとしては、相場の重要な節目に引かれるホリゾンタルラインと同じです。ホリゾンタルラインが、サポートラインやレジスタンスラインとして機能するのと同じで、フィボナッチリトレースメントによって引かれた水平線も、同様の働きを見せ、相場の転換点となることがあります。
テクニカル分析の基本となるホリゾンタルライン(水平線)に関する記事です。ホリゾンタルラインの特性や引き方、ホリゾンタルラインを活用したトレード手法まで、FX初心者の方に分かりやすく解説します。
このチャートは、上昇トレンドの安値と高値を基準に、フィボナッチリトレースメントを表示させたもので、横向きに引かれた点線が、フィボナッチ比率から求められた水準です。
このチャートでは、上昇トレンドのピークから38.2%下落したところで、一旦、反転上昇し、23.6%の水準に到達した後、50.0%の水準まで下落しています。その後も、61.8%や76.4%といった水準で、価格が反転していることが分かります。
このように、フィボナッチリトレースメントで示された各水準が、サポートラインやレジスタンスラインとして機能するということは、決して珍しいことではなく、フィボナッチ数列は、相場分析において、効果的に働いてくれるのです。
フィボナッチリトレースメントの使い方
フィボナッチリトレースメントは、トレンドの押し目や戻りを予測するのに有効なテクニカル指標です。そのため、フィボナッチリトレースメントを用いたトレード手法としては、各水準で押し目買いや戻り売りを仕掛けるといったものが考えられます。
このチャートは、下降トレンドにフィボナッチリトレースメントを表示させたものですが、ラインで示された各水準が、戻りを形成するポイントの目安と考えられます。この場合は、50.0%の水準まで調整が入った後、再度下落していますので、50.0%の水準で、逆張りの売りでエントリーすることで、戻り売りを仕掛けることができ、その後の下降トレンドについて行くことができることになります。
フィボナッチリトレースメントの注意点
フィボナッチリトレースメントで見えてくる水準というのは、確かに、相場の節目として機能しますが、過信は禁物です。各水準が、サポートラインやレジスタンスラインとしての働きを見せることもありますが、あっさりとブレイクしてしまうこともあります。
フィボナッチリトレースメントは、相場における重要なポイントを炙り出すのに便利で、視覚的にも非常に分かりやすいため、売買にも活用しやすいのですが、それだけに、だましも多くなってしまいます。
テクニカル分析にだましは付き物で、確実にだましを避ける手法は存在しませんが、複数のテクニカル指標を組み合わせて使うことで、だましに遭遇する確率は下げることができます。
シンプルな分析ほど、だましの数も増えてしまいますので、フィボナッチリトレースメントを分析に用いる際には、必ず他のテクニカル指標と組み合わせた上で、活用するようにしましょう。もちろん、だましに遭遇した際には、損切りを行い、損失を限定させることも大切です。
フィボナッチ数列を用いた他のテクニカル指標
フィボナッチ数列を用いたテクニカル指標として、最も一般的なのが、これまで解説してきたフィボナッチリトレースメントですが、フィボナッチ数列を用いたテクニカル指標というのは、フィボナッチリトレースメント以外にも、存在します。
ということで、ここでは、フィボナッチ数列を用いた他のテクニカル指標をご紹介します。
- フィボナッチエクスパンション
- フィボナッチタイムゾーン
- フィボナッチファン
- フィボナッチアーク
- フィボナッチチャネル
フィボナッチエクスパンション
フィボナッチ数列を用いたテクニカル指標の中で、フィボナッチリトレースメントの次によく用いられるのが、フィボナッチエクスパンションです。
フィボナッチエクスパンションは、押し目や戻りを形成した後に、そのトレンドが、どこまで上昇または下落するかをフィボナッチ数列より、予測するテクニカル指標です。
上昇トレンドにおいては、起点となる安値と高値、高値を付けた後にできた押し目の3点を基準に、押し目形成後の上昇によって、到達するであろう水準を予測し、下降トレンドにおいては、起点となる高値と安値、安値を付けた後にできた戻りの3点を基準に、戻り形成後の下落によって、到達するであろう水準を予測します。
フィボナッチタイムゾーン
フィボナッチタイムゾーンは、フィボナッチ分析に時間軸を取り入れたもので、相場の転換点となる価格ではなく、相場の転換点となる時間を予測しようとするものです。
フィボナッチタイムゾーンは、高値や安値を基準として、フィボナッチ数列に基づくタイミングを教えてくれます。
チャート上に、フィボナッチタイムゾーンを表示すると、時間軸に縦向きの線が引かれます。これが、フィボナッチ数列に基づくタイミングで、フィボナッチタイムゾーンでは、相場は、この周期で、転換点を迎えると予測します。
フィボナッチファン
フィボナッチファンは、任意の高値と安値を基準にフィボナッチ数列より求められる勢いのトレンドラインを教えてくれるテクニカル指標です。
このチャートでは、指定した高値から安値に到達した勢いよりも、フィボナッチ比率の分、勢いの弱いトレンドラインが引かれています。フィボナッチファンにより引かれたトレンドラインは、サポートラインやレジスタンスラインとして機能することがありますので、通常のトレンドラインと同じような考え方で値動きを分析することができます。
フィボナッチアーク
フィボナッチアークは、フィボナッチリトレースメント同様、フィボナッチ数列より、サポートラインやレジスタンスラインを予測しようとするものですが、フィボナッチリトレースメントに時間軸を加えることによって、半円形の線が描かれます。
考え方は、フィボナッチリトレースメントと同じですので、フィボナッチアークを引くことによって求められた水準で、値動きが反転するものと考えることができます。
フィボナッチチャネル
フィボナッチチャネルは、トレンドラインとトレンドの値幅に合わせて、トレンドラインに平行に引かれたチャネルラインより、フィボナッチ比率の分だけ離れたチャネルラインを引くテクニカル指標です。
フィボナッチチャネルにより引かれたチャネルラインは、トレンドラインのように、サポートラインやレジスタンスラインとして機能することがあることから、価格の転換点を見つけるのに役立ちます。
フィボナッチリトレースメントまとめ
相場は、黄金比に従って動いていると言われると、なかなか信用できないかもしれませんが、フィボナッチ分析は、紛れもない分析手法で、多くの場面で、活躍してくれます。
何の根拠もないようですが、ひとつの分析手法として確立されていること自体が、有効に機能する根拠。多くのトレーダーが、フィボナッチ分析より示された水準を節目として意識していることから、その水準で、価格が支持されたり、抵抗を受けたりするというからくりです。
特に、最もポピュラーな存在であるフィボナッチリトレースメントは、そのシンプルさゆえ、他のテクニカル指標との相性も良いことから、多くの場面で効果的に働いてくれますので、ぜひ、トレードに取り入れてみてください。