
MACDは、トレンドの方向性を測るトレンド系のテクニカル指標の一種で、1970年代にアメリカのジェラルド・アペルによって考案されました。
MACDは、移動平均線を進化させたテクニカル指標で、基本的な考え方や売買シグナルは、移動平均線とよく似ていますので、移動平均線とあわせて、使い方を理解しておきましょう。
なお、移動平均線については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらについても、参考にしてみてください。
移動平均線は、FXにおけるテクニカル指標の一種です。この記事では、移動平均線の見方や使い方を初心者の方にも分かりやすく解説しています。
MACDとは
MACDは、「Moving Average Convergence Divergence」の略で、日本語では、移動平均収束拡散法と訳されます。名前からも分かるように、移動平均線を応用したテクニカル指標で、トレンドの変化を敏感に捉えることができるという特徴を持っています。
MACDの計算式
MACDには、MACDとシグナルという2本の線から構成されていて、それぞれ、以下の計算式で求められます。
- MACD=短期EMA-長期EMA
- シグナル=MACDのSMA
つまり、MACDの線は、短期EMAと長期EMAの間隔を表した指標で、シグナルの線は、そのMACDの移動平均線と言うことになります。
なお、シグナルの計算には、MACDのSMAとするのが一般的ではありますが、EMAを用いることもあります。
SMAとEMA
ここで押さえておきたいのが、EMAという言葉。EMA(Exponential Moving Average)は、移動平均線の一種で、指数平滑移動平均線のことです。
移動平均線には、SMA(Simple Moving Average)と呼ばれる単純移動平均線とこのEMAがあり、それぞれ以下の計算式で求められます。
- SMA=n日間の終値の合計÷n
- EMA={(当日の終値)×2+(前日のEMA)×(n-1)}÷(n+1)
計算式を見ただけでは、分かりにくいかもしれませんが、SMAは、シンプルに一定期間における終値の平均値を算出し、それを結んだ線です。
対するEMAは、単純に終値の平均値を求めるのではなく、より現在に近い終値、特に、直近の終値に比重をかけて平均値を算出し、それを結んで線としています。つまり、古いデータよりも、新しいデータの方が重要という考え方に基づいて、算出したものが、EMAということになります。
EMAは、SMAに比べ、ローソク足の動きに、より敏感に反応するという特徴を持っています。
MACDは、このEMAを応用したテクニカル指標であることから、トレンドの変化をいち早く捉えるのに適しています。
MACDの設定
MACDのパラメーターについてですが、MACD線の基となる短期EMAの期間を12、長期EMAの期間を26、シグナルの期間を9として設定するのが、一般的です。
MACDの見方
このチャートは、サブウィンドウにMACDを表示させたものですが、青い線が、MACDの線、赤い線が、シグナルの線です。
MACDの見方はシンプルで、MACDの線が、上向いている場合は、相場が上昇傾向にあり、MACDの線が、下向いている場合は、相場が下落傾向にあることを意味しています。
また、MACDの線が、0の線を上抜くと、上昇トレンド発生のサインとなり、0より上の領域で上向いている場合は、上昇トレンドの勢いが強いことを表しています。反対に、MACDの線が、0の線を下抜くと、下降トレンド発生のサインとなり、0より下の領域で下向いてる場合は、下降トレンドの勢いが強いことを表しています。
ここで、簡単に補足をしておくと、先述した通り、MACDの線は、短期EMAから長期EMAを引いたもので、短期EMAと長期EMAの間隔を表した指標でした。ということは、MACDの値が0の状態は、短期EMAと長期EMAが交差していることを表しています。
更に、MACDは、短期EMAから長期EMAを引いたものですので、MACDの値が、0より大きい場合は、短期EMAが、長期EMAより上に位置していることを表していて、反対に、MACDの値が、0より小さい場合は、短期EMAが、長期EMAより下に位置していることを表しています。
従って、MACDの線が、0の線を上抜くと、短期EMAと長期EMAが、ゴールデンクロスを形成していることを意味し、MACDの線が、0の線を下抜くと、短期EMAと長期EMAが、デッドクロスを形成していることを意味しています。つまり、前者は、上昇トレンド発生のサイン、後者は、下降トレンド発生のサインとなります。
また、上昇トレンドにおいて、移動平均線が、上から短期線、中期線、長期線と並んで上昇している状態、下降トレンドにおいては、上から、長期線、中期線、短期線と並んで下落している状態をパーフェクトオーダーと言い、明確なトレンドが発生していることのサインとなりますが、MACDの線が、0より上の領域で、上向いている状態は、短期EMAが、長期EMAより上に位置して、上向きに推移している状態を表していて、反対に、MACDの線が、0より下の領域で、下向いている状態は、短期EMAが、長期EMAより下に位置して、下向きに推移している状態を表しています。
MACDの使い方
MACDから売買シグナルを読み取る際には、MACDの線とシグナルの線のゴールデンクロスとデッドクロスを見つけましょう。
MACDとシグナルのゴールデンクロスとデッドクロス
MACDにおけるゴールデンクロスとデッドクロスの考え方は、移動平均線におけるゴールデンクロスとデッドクロスの考え方と同じです。
MACDの線が、シグナルの線を下から上に突き抜けることをゴールデンクロスと言い、反対に、MACDの線が、シグナルの線を上から下に突き抜けることをデッドクロスと言います。
MACDの線とシグナルの線がクロスをした際に、注目しておきたいのが、クロスを形成した位置です。
ゴールデンクロスの場合は、0より下の領域であるほど有効で、デッドクロスの場合は、0より上の領域であるほど有効となります。
- MACDの買いシグナル
- 0より下の領域で、MACDとシグナルがゴールデンクロスを形成
- MACDの売りシグナル
- 0より上の領域で、MACDとシグナルがデッドクロスを形成
また、クロスを形成する角度にも意味があって、角度が急であるほど、上昇または下落の勢いが強いことを示していて、緩やかな角度で形成されたクロスよりも、急な角度で形成されたクロスの方が、シグナルの制度も高くなります。
MACDのダイバージェンスとリバーサル
ダイバージェンスとリバーサルは、本来、オシレーター系のテクニカル指標に見られる現象ですが、トレンド系のテクニカル指標に分類されるMACDにおいても、同様に見ることができます。
ダイバージェンスは、トレンド転換のサインで、逆張りのシグナル、リバーサルは、トレンド継続のサインとなり、順張りのシグナルとなります。
MACDは、トレンド分析が得意なテクニカル指標ですが、ダイバージェンスとリバーサルを見つけることができれば、より高度なトレンド分析ができますので、これらの考え方についても、しっかり押さえておきましょう。
なお、ダイバージェンスとリバーサルについては、以下の記事で、詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
ダイバージェンスとリバーサルは、オシレーター系のテクニカル指標において見られる現象で、トレンドの転換点や押し目、戻りを分析する際に有効です。この記事では、ダイバージェンスとリバーサルの違いやそれぞれが持つ意味について、分かりやすく解説しています。
MACDにおけるダイバージェンス
ダイバージェンスとは、下降トレンドにおいて、ローソク足が、安値を更新しているにもかかわらず、MACDが、安値を切り上げている現象、または、上昇トレンドにおいて、ローソク足が、高値を更新しているにもかかわらず、MACDが、高値を切り下げている現象のことです。
前者を強気のダイバージェンスと言い、下降トレンド終了のサインとなることから、買いシグナルと判断できます。反対に、後者を弱気のダイバージェンスと言い、こちらは、上昇トレンド終了のサインとなり、売りシグナルと判断できます。
MACDにおけるリバーサル
リバーサルは、上昇トレンドにおいて、ローソク足が、安値を切り上げているにもかかわらず、MACDが、安値を切り下げている現象、または、下降トレンドにおいて、ローソク足が、高値を切り下げているにもかかわらず、MACDが、高値を切り上げている現象のことです。
前者を強気のリバーサルと言い、後者を弱気のリバーサルと言います。
リバーサルは、ダイバージェンスによく似た現象ですが、両者のサインは、まったく逆で、リバーサルは、トレンド継続のサインです。従って、強気のリバーサルは、上昇トレンド継続のサインとなり、押し目買いのシグナル、弱気のリバーサルは、下降トレンド継続のサインとなり、戻り売りのシグナルとなります。
MACDの注意点
MACDは、移動平均線を応用したテクニカル指標であることから、レンジ相場よりも、トレンド相場向きのテクニカル指標となります。
移動平均線においても同じことが言えますが、レンジ相場においては、0ライン付近で、MACDとシグナルの線が横ばいとなり、複雑に絡み合ってしまいます。そのため、ゴールデンクロスとデッドクロスが、頻繁に発生し、売買シグナルとして、有効に機能してくれません。
レンジ相場におけるMACDの売買シグナルは、だましである危険性が高いので、基本的には、MACDは、トレンド相場でこそ有効なテクニカル指標であると考えておきましょう。
MACDのまとめ
MACDは、移動平均線を応用したテクニカル指標で、トレンド分析に力を発揮します。トレンドの変化をいち早く教えてくれるという点は、MACDの大きな武器です。
ただ、移動平均線同様、レンジ相場には、弱い一面を持っていますので、他のオシレーター系のテクニカル指標と組み合わせること等によって、弱点を補うことができ、より精度の高いテクニカル分析が可能になります。
MACDは、FXにおける基本的なテクニカル指標のひとつで、マスターしておけば、ひとつのオプションとして、効果的な働きを見せてくれるはずですので、しっかり使いこなせるようになっておきましょう。