
相場は、現実のものとなっていない予想や期待、噂といった未確定の材量で動くことがあります。
そのため、ファンダメンタルズ分析においては、事実となっていない未確定の材量に注目する必要があるのですが、ここで、理解しておきたいのが、「織り込み済み」と「材料出尽くし」という言葉です。
織り込み済みとは
織り込み済みとは、価格に影響を与える材料が、既に価格に反映されている状態のことを指します。
相場においては、将来の予想や期待といった未確定の材料であっても、先回りして、それを価格に反映しようとする傾向があります。これらの材料を価格に反映することを織り込むといい、既に反映済みの状態のことを織り込み済みといいます。
織り込み済みの良い例が、経済指標です。
各国の中央省庁等が発表する経済指標の発表に際しては、金融機関等が事前に予想を立てていて、市場予想値という形で公表されます。
相場は、経済指標の発表前から、この市場予想値をもとに動いていますので、既に、市場予想値を価格に反映した状態で、経済指標の発表を待つことになります。
材料を織り込み済みの相場においては、予想や期待が現実のものになっても、事実が確定する以前に、価格に反映されているため、相場は、それに反応することはありません。
経済指標の例で言えば、市場予想どおりの結果となった場合には、相場が大きく動くことはないということになります。
しかし、予想や期待とは異なる結果となった場合、サプライズとして捉えられ、それまで事実とは異なる材料を価格に反映していた分、相場は、大きく反応します。
経済指標発表時においても、結果と市場予想値との乖離が大きいほど、相場の反応は大きくなり、場合によっては、パニック相場とも言えるほどの乱高下を見せることがあります。
織り込み済みの状況は、決して珍しいことではなく、相場の世界では、よく見られます。そのため、ファンダメンタルズ分析においては、結果や事実だけでなく、市場の予想や噂に目を向けることも、大切です。
材料出尽くしとは
織り込み済みの相場では、未確定の材量が、事前の予想どおりに確定した場合でも、価格が無反応であったり、途端に、これまでとは反対の値動きを見せることがあります。
これは、予想や期待といった未確定の材量が確定したことにより、これまで相場を動かしていた材料がなくなってしまったため、それ以上の変動を見せなかったり、利益確定の決済により、値が反転した状態です。
このように、これまで相場を動かしていた予想や期待といった未確定の材量が確定すること等により、価格に影響を与える材料がなくなることを材料出尽くしといいます。
材料出尽くしも、経済指標発表時に、よく見られます。経済指標発表前の段階では、市場予想値を価格に織り込むため、相場は、大きく動きますが、経済指標が発表されるときには、既に織り込み済みであり、市場予想値が現実のものとなることで、材料出尽くしの状態となります。
事前の予想や期待どおりの結果となると、価格は、そのまま続伸したり、続落しそうなものですが、そうはならず、相場が反応しないばかりか、反転することも多い点には、注意が必要です。
予想や期待に反した結果となる場合はもちろん、予想や期待どおりの結果となった場合においても、材料出尽くしにより、反転することがあるということは、頭に入れておきましょう。
噂で買って事実で売る
投資の世界には、「Buy the rumor, sell the fact」という格言があります。日本語では、「噂で買って、事実で売れ」という意味です。また、「知ったらしまい」という日本の相場格言もあります。これは、材料が表面化したら、手仕舞いをすべきという意味になります。
これらは、どちらも、織り込み済みと材料出尽くしを表したものです。
事前の予想や期待といった材料が市場に出た段階で、仕込み、材料が現実のものになったら、手仕舞いをするというのが、定石です。
まとめ
- 織り込み済みとは、材料が、既に価格に反映されている状態のこと
- 材料出尽くしとは、未確定の材量が確定すること等により、価格に影響を与える材料がなくなること
- 相場は、予想や期待といった未確定の材量を織り込もうとする
- 材料出尽くしとなると、予想どおりの結果であっても、価格に影響を与えなかったり、反転することがある
織り込み済みも材料出尽くしも、決して、珍しいことではありません。これらを理解することは、ファンダメンタルズ分析において、非常に重要です。
予想や期待、噂といった未確定の材量は、値動きに大きな影響を与えることから、相場分析においては、常に、事実とともに、これらの材量に着目しておきましょう。