
売買タイミングを探るために欠かせないのが、チャート分析。そのチャートを構成しているのが、ローソク足ですが、このローソク足を使った相場分析法に酒田五法というものがあります。
酒田五法は、ローソク足の組み合わせをパターン化し、相場動向を分析するもので、相場の世界では、江戸時代から支持され続けています。米相場から生まれたものではありますが、株式投資の世界でもポピュラーな存在ですし、FXにおいても、活用することができます。
複雑なテクニカル指標を使わずとも、ローソク足だけで値動きが読み取れる優れたテクニカル分析手法ですので、頭に入れておくと、様々な場面で活躍してくれるはずです。
酒田五法とは
酒田五法は、江戸時代の米相場で活躍した本間宗久という相場師が体系化したテクニカル分析手法です。本間宗久が、山形県酒田出身であることから、酒田五法と名付けられました。
酒田五法は、チャートを構成するローソク足を使った分析手法で、複数のローソク足の組み合わせをパターン化し、そのチャートパターンから、その後の相場の展開を予測するものです。
ローソク足は、一定期間における値動きを表したもので、単体でも、相場予測に役立てることができますが、複数のローソク足の並びを分析することで、より詳細な相場予測が可能になります。
ちなみに、ローソク足の基本的な見方やローソク足1本1本の形状から読み取れるシグナルについては、以下の記事で解説していますので、参考にしてみてください。
チャート読み解く上で欠かせないローソク足に関する記事です。FX初心者のために、ローソク足の見方や意味、ローソク足のパターンとその形状から読み取れるシグナルまで、分かりやすく解説しています。
酒田五法のチャートパターン
酒田五法には、三山(さんざん)、三川(さんせん)、三空(さんくう)、三兵(さんぺい)、三法(さんぽう)という5つの基本的なパターンがあります。
これらのパターンが、チャート上に現れると、上昇または下落のサインとなります。
- 三山
- 三川
- 三空
- 三兵
- 三法
三山
三山は、相場の天井圏で現れるパターンで、上昇から下落に転じるサインとなります。反対に、相場の底で現れるパターンには、逆三山と呼ばれるものがあり、こちらは、下落から上昇に転じるサインとなります。
なお、それぞれの典型的なパターンとして、三尊天井と逆三尊底があります。
三山と三尊天井
三山は、その名の通り、ローソク足が上昇と下落を繰り返しながら、3つの山を作るようなパターンで、高値圏における天井形成のサインとなります。海外では、トリプルトップとして知られています。
なお、三山の典型的なパターンが、三尊天井と呼ばれるもので、これは、3つの山の内、中央の山が最も高くなる形を指します。ちなみに、三尊天井は、海外では、ヘッドアンドショルダーと呼ばれます。
三山は、これまで上昇していた相場が、上値を試しながらも、天井となるレジスタンスラインに3度跳ね返され、下落している構図となっており、上値が重いことを表しています。
三山の1つ目の山と2つ目の山の間の安値と2つ目の山と3つ目の山の間の安値を結んだ線をネックラインと呼びますが、3つ目の山を形成した後、ネックラインを割ると、そのまま下落に転じる可能性が高くなることから、売りのシグナルとなります。
高値圏で三山や三尊が現れた際は、上昇トレンド終了のサインと捉え、下落に備えましょう。
逆三山と逆三尊底
三山とは反対に、谷を3つ作るような形が、逆三山と呼ばれるパターンです。三山をひっくり返したような形で、海外では、トリプルボトムと呼ばれます。
逆三山の典型的なパターンが、逆三尊底で、三尊天井とは反対に、3つの谷の内、中央の谷が最も低くなる形です。こちらは、ヘッドアンドショルダーボトムとも呼ばれます。
三山が、天井形成後の下落のサインであったのに対し、逆三山は、下落から底値を形成した後、上昇するサインとなります。安値圏での逆三山や逆三尊は、下落トレンド終了を示唆していると考えましょう。
逆三山においては、1つ目の谷と2つ目の谷の間の高値と2つ目の谷と3つ目の谷の間の高値を結んだネックラインを超えると、上昇に転じる可能性が高くなるため、ネックラインのブレイクが、買いのシグナルとなります。
三川
三川は、3本のローソク足の並びに注目して、トレンドの転換点を予測するものです。三川の代表的なパターンとして、三川宵の明星と三川明けの明星があります。
三川宵の明星
三川宵の明星は、上昇トレンドから天井をつけて、下落に転じるサインです。
上昇トレンドの中、大陽線の後に、大陽線の高値を上回るコマが出現し、その後、大陰線が現れるパターンです。コマは、実体もヒゲも短いローソク足を指す言葉ですが、コマの代わりに十字線が現れた場合も、同様のサインと捉えて構いません。
三川明けの明星
三川明けの明星は、三川宵の明星とは反対に、下降トレンドの中、大陰線の後に、大陰線の安値を下回るコマまたは十字線が出現し、その後、大陽線が現れるパターンです。
こちらは、下降トレンドから底を打って、上昇に転じるサインとなります。
三空
三空は、窓を3つ続けて開けながら、ローソク足が上昇または下落するチャートパターンです。窓を開けながら上昇するパターンを三空踏み上げ、窓を開けながら下落するパターンを三空叩き込みと言います。
ちなみに、窓とは、前後のローソク足の間に空く間隔のことで、三空の「空」は、この窓のことを表しています。
三空踏み上げ
三空踏み上げは、窓を3つ続けて開けながら、陽線が並ぶパターンです。陽線が続くだけでなく、窓を開けながら、上昇していることから、上昇の勢いが非常に強い状態ですが、このパターンは、行き過ぎた上昇を示しており、反転下落のサインとなります。
三空叩き込み
三空叩き込みは、窓を3つ続けて開けながら、陰線が並ぶパターンで、三空踏み上げとは、反対の意味を持ちます。下落の勢いが非常に強い状態ですが、行き過ぎた下落を示しており、反転上昇のサインです。
三空と為替相場における窓
窓は、市場がクローズしている時間帯に相場を大きく動かすインパクトの強い材料が発生した際にできるもので、株式市場では、一般的なものですが、為替市場では、なかなか発生しません。というのも、為替市場は、24時間オープンしており、クローズするのは、週末のみだからです。
そのため、月曜朝のオセアニア市場のオープン時には、前週金曜日のニューヨーク市場クローズ時との為替レートのギャップが窓として発生することがありますが、それ以外の場面においては、日常的に窓が発生するということはありません。
FXにおけるチャート上の窓は、隣り合ったローソク足の間にできる空間のことです。この記事では、窓開けの理由や窓が開きやすい状況、窓が開いた際のトレードテクニックについて、分かりやすく解説しています。
従って、FXの世界で、三空のパターンをそのまま用いることは難しいのですが、窓の有無にかかわらず、トレンドの終盤と考えられる局面で、三空踏み上げのように陽線が続いたり、三空叩き込みのように陰線が続くと、天井または底を形成して、トレンドが転換する可能性が強いと考えられます。
また、陽線または陰線が続くということは、相場の勢力が買いまたは売りのどちらかに偏っていると考えられることから、買われ過ぎ、売られ過ぎも疑われますので、反転下落、反転上昇に備えておきましょう。
三兵
三兵は、陽線または陰線が3本続く形で、赤三兵と黒三兵の3つのパターンがあります。陽線が続くパターンが、赤三兵、陰線が続くパターンが、黒三兵です。
赤三兵
赤三兵は、陽線が続いていることから分かる通り、上昇の勢いが強い状態で、上昇トレンド発生のサインとなります。特に、底値圏で、赤三兵が現れた場合は、その精度も高くなります。
ただ、赤三兵の形であっても、長い上ヒゲが伸びている陽線から構成される状態は、赤三兵先詰まりと呼ばれ、上昇の勢いが弱いことを表しているため、赤三兵とは反対に売りのシグナルとなることから、注意が必要です。
黒三兵
黒三兵は、陰線が3本連続している形で、下降トレンド発生のサインです。天井圏で現れた場合は、より精度が高くなります。
しかし、黒三兵も赤三兵と同様で、長い下ヒゲが伸びている場合は、下落の勢いが衰えているサインとなりますので、黒三兵とは反対に、買いのシグナルとなります。
三法
三法とは、「売り・買い・休み」の3つを意味していて、「休むも相場」という格言があるように、相場では、休むことも必要だということを表しています。
上げ三法
上げ三法は、上昇トレンドの最中に発生した大陽線の後に、その大陽線の安値を下回ることのない小陽線または小陰線が3つ続き、最初の大陽線の高値を上回る大陽線が現れる形です。
最初の大陽線の後に続く小陽線や小陰線は、保ち合いの状態を表していて、最後の大陽線が、最初の大陽線の高値を上回ると、再度、上昇が始まることのサインとなります。そのため、最後の大陽線が、最初の大陽線の高値を上回ったところが、買いのシグナルと判断できます。
下げ三法
下げ三法は、下降トレンドの最中に発生した大陰線の後に、その大陰線の安値を上回ることのない小陰線または小陽線が3つ続き、最初の大陰線の安値を下回る大陰線が現れる形です。
上げ三法と同様、3本の小陰線や小陽線は、保ち合いの状態です。そして、最後の大陰線が、最初の大陰線の安値を下回ると、下落が継続することを示しています。上げ三法とは反対に、売りのシグナルです。
酒田五法のまとめ
ローソク足は、その1本1本にも意味がありますが、複数のローソク足の組み合わせのパターンから相場を分析することで、より詳細な相場予測を行うことが可能になります。
実際のチャートの中から、酒田五法のパターンを見つけ出すには、慣れも必要ですが、酒田五法を活用することで、相場分析の幅が広がるはずですので、マスターしておくと良いですよ。