
テクニカル分析というと、複雑なテクニカル指標を駆使して、値動きを分析するというイメージをお持ちかもしれませんが、チャート上に線を引くのも、立派なテクニカル分析です。
しかも、チャート上の線から読み取れる情報は、非常に多く、売買のポイントまで知らせてくれるので、あなどってはいけません。
この記事では、テクニカル分析の基本中の基本でありながら、重要な役割を持っているトレンドラインについて、解説します。テクニカル分析において、超重要なものとなりますので、必ず理解しておきましょう。
トレンドラインとは
トレンドラインは、複数のローソク足の高値どうしまたは安値どうしを結ぶことでできる線のことです。
一見、何の変哲もないただの線ではありますが、そこから読み取れることは、非常に多く、トレンドラインは、テクニカル分析を行う上では、欠かせない超重要な線なのです。
それでは、トレンドラインが持つ役割とは、どのようなものなのでしょうか。
トレンドラインの役割
トレンドラインの役割としては、以下が挙げられます。
- 相場局面を見極める
- トレンドの勢いを見極める
- サポートラインとレジスタンスラインを見つける
- 売買のタイミングを見極める
相場局面を見極める
相場には、大きく分けると、トレンドとレンジの2つがあります。更に、トレンドには、上昇トレンドと下降トレンドという2つがあるのですが、トレンドラインを引くことで、その時々の相場局面を正確に把握することができます。
チャート上に引かれたトレンドラインが右肩上がりであれば、上昇トレンドですし、右肩下がりであれば、下降トレンドです。また、ほぼ横向きに推移していれば、レンジということになります。
相場局面が異なれば、有効なトレード方法も異なります。今が、上昇トレンドにあるのか、下降トレンドにあるのか、レンジにあるのか、これらの相場局面を読み解くことは、FXにおいて、非常に重要なことです。
トレンドラインは、その相場局面を明確にしてくれるという非常に重要な役割を持っています。
相場を形成するトレンドとレンジ。この記事では、これらの相場局面の特徴とそれらを判断するための見極め方、更には、それぞれの相場局面に応じた効果的なトレード手法について、徹底的に解説します。
トレンドの勢いを見極める
トレンドラインは、トレンドの勢いも教えてくれます。トレンドラインの傾きが急であるほど、トレンドの勢いが強いことを示していて、トレンドラインの傾きが緩やかであるほど、トレンドの勢いが弱いことを示しています。
ちなみに、トレンドの勢いが強いほど、短期間で大きく値が動くので、効率的に稼ぐことができますが、勢いが強いトレンドは、長続きしません。トレンドの勢いが強いと、すぐに反転することもあるので、注意が必要です。トレンドラインの角度があまりに急な場合、そのトレンドは、継続しにくいと考えておきましょう。
つまり、トレンドラインの傾きからは、トレンドの勢いと持続性を読み取れるということになります。トレンドラインの向きだけでなく、その傾きにも注目してみましょう。
サポートラインとレジスタンスラインを見つける
トレンドラインは、サポートラインやレジスタンスラインとして機能するという性質を持っています。
サポートラインは、下値支持線とも呼ばれる、相場の下落を下支えする線です。ローソク足がサポートライン付近まで下落すると、反転して、上昇を見せることがあります。このように相場の下落を支えるのが、サポートラインの働きです。
対するレジスタンスラインは、上値抵抗線と呼ばれます。サポートラインとは反対に、相場の上昇を抑え込む働きを持っているのが、レジスタンスラインです。そのため、レジスタンスライン付近までローソク足が上昇すると、反転して、下落することがあります。
チャート上にトレンドラインを引いてみると、トレンドライン付近でローソク足が反転して、これまでとは反対の方向に動いているポイントが見られると思います。
これこそ、トレンドラインが、サポートラインやレジスタンスラインとして機能している証拠で、トレンドライン自体が、相場における重要な節目となります。
サポートラインやレジスタンスラインは、トレンドラインを実際に引いてみることで、初めて可視化できるものですので、トレンドラインをチャート上に引くことは、非常に大きな意味を持っています。
なお、トレンドラインとよく似たものにホリゾンタルラインがあります。ホリゾンタルラインは、際立った高値や安値から水平に引かれた線で、こちらも、サポートラインやレジスタンスラインとしての機能を持っていて、重要な節目を形成します。
ホリゾンタルラインについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
テクニカル分析の基本となるホリゾンタルライン(水平線)に関する記事です。ホリゾンタルラインの特性や引き方、ホリゾンタルラインを活用したトレード手法まで、FX初心者の方に分かりやすく解説します。
売買のタイミングを見極める
トレンドラインは、相場局面や相場の節目を明らかにしてくれるだけでなく、売買のタイミングを見極める場面でも、活躍してくれます。
詳細は、後ほど解説しますが、トレンドラインは、相場の重要な節目となり得る線ですので、トレンドライン付近のローソク足の動きは、今後の相場を占う鍵となり、エントリーやイグジットのシグナルとして、活用できます。
トレンドラインの引き方
トレンドラインの引き方は、非常にシンプル。上昇トレンドであれば、安値と安値を結び、下降トレンドであれば、高値と高値を結びます。
これだけでトレンドラインは引けてしまいますが、いくつか注意が必要な点もあります。適切な引き方ができていないと、有効なトレンドラインとして機能しませんので、気を付けましょう。以下にトレンドラインを引く際に注意すべきポイントをまとめましたので、しっかり押さえておいてください。
- 高値と安値をともに更新した点を結ぶ
- ローソク足がはみ出さないように線を引く
- ヒゲを無視しない
高値と安値をともに更新した点を結ぶ
安値と安値、高値と高値を結ぶといっても、どの安値や高値でも良いという訳ではありません。
トレンドラインを引く際に思い出してもらいたいのが、ダウ理論。
テクニカル分析の基礎とも言えるダウ理論について、まとめています。ダウ理論における6つの基本法則からダウ理論を活用したトレード手法まで、分かりやすく解説しています。
ダウ理論では、上昇トレンドと下降トレンドが、それぞれ以下のように定義されています。
- 上昇トレンド
- 高値と安値がそれぞれ切り上がっているもの
- 下降トレンド
- 高値と安値がそれぞれ切り下がっているもの
上昇トレンドでは、安値が切り上がっていることはもちろんのこと、安値とともに高値も切り上がっていなければいけません。また、下降トレンドでは、高値とともに安値が切り下がっていることが、条件です。これらの条件を満たしていなければ、トレンドとは呼べません。
例えば、安値だけ切り上がって、高値が切り上がっていない状態は、上昇トレンドを形成しているとは言えませんし、高値だけ切り下がって、安値が切り下がっていない状態は、下降トレンドを形成しているとは言えないということになります。
トレンドラインを引く際にも、この考え方は、重要です。
安値だけが切り上がっている安値どうしや高値だけが切り下がっている高値どうしを結ぶのではなく、上昇トレンドの場合は、安値と高値がともに切り上がっている安値どうし、下降トレンドの場合は、高値と安値がともに切り下がっている高値どうしを結ぶようにしましょう。
このルールを守れていないと、チャート上に引いたトレンドラインが、うまく機能しなくなってしまいます。
ローソク足がはみ出さないように線を引く
これは基本中の基本でもありますが、トレンドラインを引く際には、ローソク足が線からはみ出さないようにしましょう。ローソク足とピッタリ接するように線を引くのが、コツです。
ローソク足がはみ出るように線を引いてしまうと、サポートラインやレジスタンスラインとして機能しているポイントが分からなくなってしまいます。丁寧に線を引かないと、十分な分析ができないだけでなく、売買のポイントを誤ってしまうことになりますので、注意しましょう。
ヒゲを無視しない
トレンドラインを引く際、ローソク足のヒゲは絶対に無視してはいけません。ヒゲが伸びている場合は、実体ではなく、ヒゲを結ぶように線を引きましょう。
なぜヒゲどうしを結ぶかというと、ヒゲを無視してトレンドラインを引いてしまっては、サポートラインやレジスタンスラインが、正確に分析できないからです。
そもそもローソク足のヒゲというのは、高値や安値をつけたあとに反発して、値を戻したということを表しています。つまり、高値や安値をつけたポイントが、サポートラインやレジスタンスラインとして機能している可能性があるということです。
ローソク足のヒゲにも重要な意味があって、それを無視してしまっては、有効なトレンドラインを引くことはできません。トレンドラインを引く際には、ローソク足のヒゲを結ぶということを覚えておいてください。
トレンドラインの使い方
ここでは、トレンドラインを使ったトレード手法について、解説します。シンプルで実際のトレードに取り入れやすいと思いますので、しっかりと頭に入れておきましょう。
逆張りで押し目買いや戻り売りを狙う
トレンドフォロー戦略において有効なのが、トレンドラインを活用した押し目買いと戻り売りです。
トレンドラインは、サポートラインやレジスタンスラインとして機能を持っていますので、上昇トレンドにおいては、トレンドライン付近までローソク足が下落すると、反転上昇し、押し目を形成し、下降トレンドにおいては、トレンドライン付近までローソク足が上昇すると、反転下落し、戻りを形成することがあります。
トレンドライン付近でローソク足が反発したら、押し目買いまたは戻り売りの絶好のチャンスです。ローソク足が反発するところを逆張りし、うまくトレンドに乗りましょう。
ブレイクしたところを順張りで狙う
トレンドラインは、いつまでも機能する訳ではありません。いつかは、ローソク足がトレンドラインを割ることになります。ローソク足がトレンドラインを突き抜けることをブレイクと言いますが、ローソク足が、一度、トレンドラインをブレイクすると、それは、ひとつのトレンドの終了を意味しています。
トレンドラインをブレイクした後は、値を戻して、これまでと同じ方向に進むこともあれば、反対方向に新たなトレンドができることもありますし、レンジ相場となることもあります。ブレイクしただけでは、ブレイク後の大きな流れは分かりませんが、ブレイク直後に関しては、急激にブレイクした方向に大きく動くことが多いです。
この特性を活かし、トレンドラインをブレイクした方向に順張りでついて行くというのも、有効な戦略です。
また、トレンドに沿ったポジションを保有している際に、ラインブレイクした場合は、イグジットのポイントになります。ラインブレイクの後に値を戻し、再度、これまでと同じ方向に進むことも考えられますが、それは結果論。ラインブレイクをトレンドの終了と考えて、決済する方が無難です。
トレンドラインのまとめ
トレンドラインは、引き方さえ理解すれば、誰でも引くことができますが、そこからは、非常に多くの情報を読み取ることができます。シンプルでありながら、超重要な役割を持っているのです。
シンプルな分、他のどのようなテクニカル指標とも組み合わせることができますし、他のテクニカル指標と組み合わせることで、より精密なテクニカル分析が可能になりますので、トレンドラインの特性や引き方、使い方については、必ず頭に叩き込んでおきましょう。
なお、テクニカル分析においては、ローソク足とテクニカル指標も、非常に重要なツールとなります。これらについては、以下の記事で、詳しく解説していますので、あわせて理解しておいてください。