信託保全義務付けでFX会社が経営破綻しても投資家の資産は返還される!
このページの要点
  • 信託保全は投資家の資産を守る仕組み
  • FX会社や信託銀行が破綻しても投資家の資産は返還される
  • 信託保全の対象は証拠金に未決済損益を加減した全額

利用しているFX会社がつぶれてしまった場合、私たちが預けている証拠金等の資産はどうなるのでしょうか。FX会社の経営破綻によって、証拠金や稼いだ利益が、水の泡になってしまっては困りますよね。

実は、FXでは、FX会社が経営破綻した場合でも、投資家の資産は返還される仕組みが導入されています。それが、信託保全という仕組みです。

信託保全とは

信託保全とは、FX会社が、顧客から預かった資産を信託銀行等に保管し、FX会社自身の資産と区分して管理することを言います。

信託保全によって、投資家の資産は、信託銀行でしっかり守られていますので、万が一、FX会社が経営破綻に陥っても、大丈夫。FX会社に預けた資産は、受益者代理人を通して、投資家の元に返還されます

つまり、信託保全は、FX会社が破綻した場合に、投資家の資産を守るための仕組みなのです。

信託保全はFX会社に課された義務

この信託保全、2010年2月からは、日本国内のすべてのFX会社に義務付けられています

それまでは、FX会社に信託保全の義務はなく、法律上求められていたのは、分別管理という方法でした。分別管理とは、顧客の資産とFX会社自身の資産を区分して管理することだけを指していて、投資家の資産をどのように管理するかは、各FX会社次第。

そのため、信託保全義務付け前から分別管理した顧客の資産を信託銀行に預けて、信託保全を行っているFX会社もあれば、信託保全は行わず、顧客の資産を他の金融機関に預けたりして、管理しているFX会社もあったのです。

しかし、分別管理だけでは、十分に投資家の資産を保護することはできないということで、信託保全が義務付けられたという訳です。

信託保全の義務付けによって、現在では、どのFX会社を使っても、万が一の際に、投資家の資産を守ってくれるスキームは用意されていることになっています。

信託保全の対象となる資産

信託保全によって守られる個人投資家の資産は、預け入れている証拠金だけではありません。預入証拠金の他、未決済ポジションの損益や未実現分を含めたスワップポイントが対象となります。

つまりは、その時点における口座内のすべての資産が、信託保全の対象となるということ。

FX会社の経営破綻によって、膨らんできた含み益やコツコツ貯めたスワップポイントをすべて失ってしまうということにはならないので、安心です。

信託先の信託銀行が破綻した場合

FX会社が倒産しても、投資家の資産は守られることは分かりましたが、信託先の信託銀行が破綻した場合は、どうなのでしょうか。同じように、投資家の資産は守られるのでしょうか。

信託銀行が経営破綻に陥ってしまっては、もう終わりな感じもしますが、そんなことはありません。信託銀行が破綻した場合でも、投資家の資産は、返還が保証されています

というのも、信託銀行も、信託銀行自身の資産と受託している信託財産とを分別して管理することが義務付けられていて、信託法によって、信託銀行が破綻した場合でも、債権者は、信託銀行が顧客から預かっている資産を差し押さえることはできないような仕組みになっています。

そのため、FX会社が信託している信託銀行が破綻した場合でも、投資家の資産は、ちゃんと返還されます。FX会社がつぶれようが、信託銀行がつぶれようが、安心なのです。

信託保全の注意点

信託保全は、原則として、投資家の資産が全額返還される仕組みにはなっていますが、本当の意味で全額返還されるかというと、微妙なところではあります。

その理由は、返還には諸費用がかかり、また、信託にはタイムラグがあるからです。

返還額から諸費用が差し引かれる

FX会社が破綻して、投資家の資産を返還するには、返還事務費用や信託報酬、弁護士費用等、それなりの費用が発生します。

そして、投資家に返還されるのは、これらの諸費用が控除された額となります。

投資家の資産は、全額が信託保全の対象とはなっているのですが、返還に伴う諸費用が発生し、これが返還のための原資から差し引かれることによって、必ずしも、資産の全額が返還されるとは限らないのです。

なお、FX会社によっては、返還に伴い発生するであろう費用分を上乗せして、信託保全しているところもあります。

信託にはタイムラグがある

信託は、毎日行われていますが、リアルタイムに行われているとは限りません。投資家がFX口座内の保有している資産は、リアルタイムに信託銀行に預けられている訳ではないのです。

信託銀行に預けられる投資家の資産は、FX会社によって、毎日計算されることになってはいますが、信託銀行に預けられるのは、計算日の翌日から数えて、2営業日以内でなければならないと定められています。

いつ信託が行われるかというのは、それぞれのFX会社によって異なりますが、制度上、2営業日以内に信託を行えれば問題ありませんので、信託には、最大で2営業日のタイムラグが生じることになります。つまり、今、信託銀行に預けられている投資家の資産は、2営業日前の金額かもしれません。

実際のところ、多くのFX会社は、計算の2営業日後に信託を行っており、これが、一般的となっています。そのため、FX会社が破綻した時点における信託額が、投資家の資産より少なければ、全額が返還されない可能性もあるということです。

信託保全のまとめ

信託保全のおかげで、FX会社が破綻した際でも、投資家の資産は、しっかり守られ、返還されるということが分かりました。また、現在は、信託保全が日本国内のすべてのFX会社に義務付けられていますので、どのFX会社を使っても、安心です。

ただ、注意すべき点もありました。投資家の資産全額を信託する完全信託保全が取り入れられてはいますが、返還に伴う諸費用が発生したり、信託にタイムラグがあることによって、FX口座内の全額が返還されるとは限りません。

また、FX会社がつぶれてしまっては、資産の返還にも、一定の時間はかかりますし、それ以降、取引ができなくなってしまいます。

いくら安心といっても、トラブルには巻き込まれないのが、一番。FX会社を選ぶ際には、信用力にも注目しておきましょう。